不動産の売却をスムーズに、そしてより希望に近い形で実現させるためには、売却の全体的な流れを理解していることが大切です。売却の大まかな流れと売却にかかる期間の目安を事前に押さえておけば、売却計画も立てやすくなります。不動産の種類によって準備する必要書類などに少々違いはありますが、全体的な流れは一緒です。それでは、不動産売却の際の一般的な流れを見ていきましょう。
目次
不動産売却の流れと期間
不動産を売却しようと決断したら、まずはどのような流れで売却が進むのかを把握しておくことが重要です。流れを把握しておけば、どの段階で何をすべきか、何を準備しておいたらいいのか、ということを事前に知っておくことができます。また、売却の段階ごとにどれくらいの期間がかかるのか、ということも頭に入れておきましょう。一般的に、不動産の売却を決めて準備を始めてから引き渡しまでに6ヶ月程度要しますが、これは不動産の種類や売却の条件、タイミングなどにより左右されますので、大体の目安として考えておきましょう。特に一戸建てや土地の場合は、境界線の測量が必要になってくることもあるので、その分さらに時間を要するでしょう。
物件の売り出し前
ここからは、実際に物件を売り出すときの手順について説明していきます。まずは、物件を売り出す前にすることから見ていきましょう。物件を実際に売り出すまでには、事前準備の他に、売却のパートナーとなる不動産仲介会社を選んだり、売り出し価格を決めたりします。このような決断は、その後の売却活動を左右する重要な要素になります。様々な意見を参考にして十分考えた上で判断しましょう。
ローン残債があれば、売り出し前に必ず確認し、どのように返済するか計画を立てておきましょう。せっかく買い手が見つかっても、引き渡し日までにローンを完済していないと引き渡しができません。また、売却の際には仲介手数料や税金などの諸費用が必要になってくることも頭に入れておきましょう。さらに、売却が思うようにいかず、予想していた売却価格よりも低い価格で売却せざるを得ない状況になった場合、どのように不足分を捻出するのかも考えておく必要があります。
<物件を売り出すまでのプロセス>
1. 相場価格の把握
まず初めに、所有する不動産の相場価格をチェックしましょう。相場価格を知ることで、どれくらいの価格帯であれば売却できそうかイメージすることができます。相場価格を調べる際は、所有する不動産と似た条件の不動産がいくらで売り出されているか、またはいくらで売却されたかを見ます。例えば、一戸建てやマンションの場合は、築年数、間取り、広さ、最寄り駅、最寄り駅からの距離などの条件を照らし合わせてみるといいでしょう。様々なサイトがあるので、自分なりに調べてみましょう。
*参考サイト*
―不動産取引価格情報検索(国土交通省・取引価格情報を確認できる)https://www.land.mlit.go.jp/webland/servlet/MainServlet
―地価公示・都道府県地価調査(国土交通省・地価情報を確認できる)
https://www.land.mlit.go.jp/landPrice/AriaServlet?MOD=2&TYP=0
―レインズ・マーケット・インフォメーション(不動産流通機構・マンションと一戸建ての売買情報を確認できる)
http://www.contract.reins.or.jp/search/displayAreaConditionBLogic.do
2. 必要書類の準備
不動産を売却するにあたり、様々な書類が必要になります。大まかに分けると、不動産仲介会社と媒介契約を結ぶ時、売り出した後の販売活動中、買い手が決まり売買契約を結ぶ時、そして不動産を引き渡す時にそれぞれ書類が必要になります。売却する不動産の種類や売却方法によって準備する書類が違ったり、書類によっては平日しか取得できなかったりするものもあるので注意が必要です。売却をスムーズに進めるためにも、売却スケジュールと自分の予定をよく確認し、必要書類は事前に揃えるようにしておきましょう。必要書類の詳細は仲介会社から説明がありますので、わからないことがあればその都度仲介会社に確認しておくと安心です。
3. 不動産査定
不動産査定とは、不動産仲介会社に依頼して「所有する不動産がどれくらいなら売れそうか」という価格を算出してもらうことです。査定を依頼するなら、複数の仲介会社から査定してもらう一括査定をおすすめします。一括査定は、不動産一括査定サイトから依頼することもできますし、複数の仲介会社に直接依頼することもできます。仲介会社によって査定価格は異なってくるので、どうしてそのような査定になったのかという根拠を聞いてみるといいでしょう。査定価格や仲介会社の意見は売り出し価格を決定する際参考にできます。
売却のパートナーとなる仲介会社選びは非常に重要です。査定を通して会社の雰囲気やスタッフの人柄などを見たり、自分でも各仲介会社について調べたりしながら、最も信頼の置ける仲介会社を選びましょう。
4. 不動産仲介会社との媒介契約の締結
一括査定をもらった後は、今後付き合っていく不動産仲介会社と媒介契約を結びます。媒介契約には、大きく分けて三つの契約形態が存在します。まずは一社とだけ契約を結ぶ形態の「専属専任媒介契約」と「専任媒介契約」、それから複数社と契約を結ぶ形態の「一般媒介契約」があります。この三種類の契約形態の特徴をよく理解した上で、自分の売却する不動産の種類や売却理由などを考慮しながら、最適な媒介契約を選択しましょう。
5. 売り出し価格の決定・売り出し開始
不動産仲介会社と契約を結んだら、売り出しに向けて条件や価格などを決めていきます。特に、売り出し価格はその後の売却活動に影響を与える非常に重要な要素になるため、売却する事情を踏まえつつ、査定価格、相場価格などを考慮した上で慎重に決めましょう。さらに、売却の際には、ほとんどの場合において買主と価格交渉をすることになります。そのため、値下げ交渉があることを見込んだ上での価格に設定しておくことをおすすめします。
物件の売り出し開始〜売買契約の締結
売り出しの条件や価格が決まったら、媒介契約を結んだ不動産仲介会社主導で売却活動が始まります。いつでも内覧を受け入れられるように準備をしておきましょう。その後買い手が現れ、売却条件や価格の交渉などが済めば、売買契約の締結になります。より理想に近い売却を実現させるためにも、仲介会社に任せきりではなく、売主として積極的に売買活動に関わっていく姿勢が大切です。
<売り出しから売買契約締結までのプロセス>
1. 売却活動・活動の経過報告
不動産の売却は、不動産仲介会社主体で進みます。仲介会社は、インターネットや情報誌などの広告媒体に物件情報を掲載したり、予約なしでも内覧できるオープンハウスを開催したり、不動産流通機構(レインズ)へ物件を登録したりして、より広い範囲から購入希望者を探します。レインズにはほとんどの不動産会社が加入しているため、他の不動産会社の購入希望者にも物件を紹介できるようになります。
「専属専任媒介」や「専任媒介」といった媒介契約を結んだ場合は、仲介会社から定期的に販売活動の報告があります。仲介会社が熱心に販売活動を行なっているか、きちんと確認することが大切です。また、なかなか購入希望者が現れない場合は販売活動の見直しが必要になるので、仲介会社とよく協議して新たな方向性を模索しましょう。もしくは、仲介会社を選びなおすというのも一つの方法です。
2. 内覧の受け入れ
販売活動が始まったら、いつでも内覧を受け入れられるように準備をしておきましょう。内覧とは、物件に興味を持った人達が実際に物件を見学することです。見学者は、部屋はもちろん、ベランダや庭、さらにはクローゼットや押し入れの中なども見るでしょう。物件に対して好印象を持ってもらうためにも、掃除や整理整頓はきっちり行い、部屋をより良く見せる努力をしましょう。
3. 売買条件の交渉
内覧を経て購入希望者が現れたら、売主と購入希望者の間で売買価格や引き渡し日などの条件交渉が始まります。売主と購入希望者の間には仲介会社が入るので、実際は仲介会社を通してのやりとりになります。条件交渉では、購入希望者からの条件を全て飲んだり、仲介会社のアドバイス通りに全て決めたりするのではなく、自分なりによく考えて納得した上で交渉を進めていきましょう。
特に、価格に対しては値下げ交渉が入ることが多いので、事前に「値下げをするならばここまで」という最低ラインを仲介会社と共有しておいた方がよいでしょう。また、物件に瑕疵(かし)、つまり欠陥や不具合があれば事前に告知しておきましょう。契約時には明らかになっていなかった瑕疵が契約後に見つかれば、契約解除になったり損害賠償を請求されたりする可能性がありますので注意が必要です。
4. 売買契約の締結
条件交渉がまとまったら、売主と買主で売買契約を締結します。契約時に必要になる書類も多いので、事前に全て揃えておきましょう。売買契約を結んだら、買主は売主に対し手付金を支払います。このタイミングで、売主は仲介会社に対し仲介手数料の半金を支払います。残りの半分は、決済・引き渡し後に支払います。ちなみに、仲介手数料は売買代金によって変わってきます。自分の場合はいくらになるのか、事前に把握しておきましょう。
売買契約の締結後〜物件の引き渡し
売買契約を締結したら、引き渡しに向けての準備を進めます。ローンの残債がある場合は引き渡し日までに完済し、抵当権を抹消しておく必要があります。また、当たり前のことですが、引っ越しも済ませておかなければなりません。
<売買契約締結から物件の引き渡しまでのプロセス>
1. ローンの完済・抵当権の抹消
売却が決定した物件に住宅ローンが残っている場合は、引き渡し日までにローン残債を完済し、金融機関の抵当権を抹消しておく必要があります。一般的には、売買代金をローン返済に当てることが多いため、引き渡し日に買主から売買代金を受け取り、同時にローンを完済し抵当権を抹消します。
抵当権とは、住宅ローンの借入者がローンを返済できなくなった場合に、金融機関がその住宅を売却し資金を回収できる権利のことです。抵当権を抹消しておかないと、物件の買い手が新たな住宅ローンを組めません。
2. 引越し準備・物件の引き渡し
当然のことですが、引き渡し日までに引っ越し、公共料金などの精算は終わらせておきましょう。引き渡し日当日には、買主から売主への残金の支払い(決済)と、所有権を売主から買主に変更する所有権移転登記の申請を行います。もし売主に住宅ローンが残っているなら、このタイミングでローンを解約・完済し抵当権を抹消します。引き渡しには金融機関や法務局での手続きがあるため、通常は平日の日中に行います。ただし、売主と買主の間で合意があれば、土日に行うことも可能です。決済と引き渡しが無事に済んだら、売主は不動産仲介会社への仲介手数料の残額を支払います。これで売却が完了となります。
3. 納税・確定申告
無事に売却が済んだら、それで終わりではありません。不動産売却で譲渡所得(利益)が出た場合、それにかかる所得税や住民税などの税金を納付しなければいけないため、確定申告をする必要があります。確定申告は毎年2月中旬から3月中旬に行いますので、忘れないようにしましょう。確定申告を行うことによって、譲渡所得に対する「特別控除」や「買い替え特例」を利用できる可能性があるため、節税につながります。一方、不動産売却で譲渡所得がゼロもしくは赤字だった場合、それにかかる税金はもちろん発生しないので、確定申告をする必要はありません。
まとめ
さて、今回は不動産売却の流れを大きく3つに分けてご紹介しました。不動産を売り出す前、売り出し中、そして売却後のそれぞれの場面でどのようなことをするのか、という流れを事前に押さえておくことで、計画的に売却準備を進められるでしょう。